グルーヴ感とは?グルーヴィな演奏をするための4要素と練習のコツ

「グルーヴ感って何?なんかノッてる感じのこと…?」
音楽をやっているとよく聞く言葉ですが、いざ説明しようとすると意外と難しいですよね。
「ノリの良さ?」「リズム感の一種?」──そのどれも正解で、どれも少し違う。
この記事では、バンド歴10年以上の筆者が、「グルーヴ感とは何か?」をできるだけわかりやすく言語化してみます。
そして、グルーヴ感のある演奏をするにはどうすればいいかについても、実体験をもとに紹介していきます。
音楽の「ノリ」をもっと深く理解したい方のヒントになればうれしいです。
グルーヴ感とは?意味と、音楽における「ノリ」の正体
たとえば、こんなときに「グルーヴ感」を感じたことはありませんか?
- ライブで自然と体が揺れてしまう演奏
- リズムは単調なのに、なぜか引き込まれるビート
- バンド全体が一体となってうねっているような感覚
- 同じフレーズなのに、演奏者によって“ノリ”がまるで違う
こうした、「体が自然に反応する」ような音楽的なノリこそが、まさに「グルーヴ感」と呼ばれるものです。
しかしそうなると、静かでリラックスできるようなクラシックにはグルーヴがないのか?と言うとそうではありません。
「踊れる音楽」と対をなすような「リラックスできる音楽」にも、やはりそれに応じた「リラックスできるグルーヴ」が存在しています。
まずは単にノリノリの音楽だけを指してグルーブという概念を用いるのではなく、「優雅で壮大さを感じさせるグルーヴ」「リラックスできて眠くなるグルーヴ」などグルーヴには無限の種類があると理解します。
しかしこう言うと余計にややこしく感じるかもしれません(笑)
そこでここではひとまず「グルーヴの良い演奏 = 聴いている人がノレる」と理解して、どちらかといえばリラックス系の音楽よりロックミュージックを前提に説明したいと思います。
どうすればグルーヴ感は生まれる?4つの必須要素
さらにグルーヴをひも解いていくために、いくつか概念を紹介しながら解説していきます。
グルーブには「休符」が必要である
まずはこちらの動画を再生してみて下さい。
ピーっと音が鳴り続けています。
言うまでもなく、グルーヴはありません。
むしろ聴いていて不快ですよね(笑)
音が鳴り続けているとは、言い換えると「休符がない」と言えます。
このことからまず、グルーヴには休符が必要ということがわかります。
しかし普通、どんな楽曲にも必ず休符がありますよね。
だから「そんなの当たり前じゃん!」と思うかもしれません。
ところが、「楽譜の中で休符がある」ことと「休符を感じる演奏」には大きが違いがあります。
例えばドラムの場合、ハイハットを力いっぱいバシバシと叩いたとしましょう。
こうすると休符が感じられません。

これはさっきのピー音と似ている状態と言えます。
しかし適切なタッチと、ほどよい左足の開閉で叩くと、休符が生まれてきます。

特にライブ演奏時において、意外なほど「休符を感じない演奏」になってしまいがちです。
バンド全体の音が「ワーワー」と爆音でなっていて、なんとなく迫力はあれど休符を感じない。
だからグルーヴがない。
そうなると、雰囲気はエモーショナルだけど、なぜか盛り上がらないライブになってしまいます。
休符を感じなくなる原因は、ハイハットの例にあるような「演奏力」にあることもあれば、全体の「音作り」かもしれないし、そもそもオリジナル曲の「アンサンブル(アレンジ)」に問題があるのかもしれません。
いづれかの観点で「休符がちゃんと聞こえてくるか?」をよくチェックする必要があるでしょう。
グルーヴには、低音と高音の「差異」が必要である
ミュージシャンには「クリックそれ自体にはグルーヴがない」という人がいます。
なぜかと言うとクリック音は一定の音色だからです。
試しにこちらのクリック(メトロノーム)動画を再生して、しばらく黙って聴いてみて下さい。
…どうでしょう?
気が狂ってきませんか?(笑)
さっきの休符の話で言えば、休符はある”のに”やっぱりグルーヴを感じません。
3分もすれば「うるせぇ!」となって、全然楽しくないはずです。
このことから、グルーヴを生むには、(休符があっても)ひとつの音と一定のリズムだけでは不十分ということがわかります。
仮にメトロノームの音色を変えて、低音と高音が交互に「ドンッ!タンッ!ドンッ!タンッ!」鳴るように設定したとします。
これでずいぶんとノレる感じに聞こえるはず。
少なくとも低音と高音の差異が必要というのは、グルーヴ発生の前提条件と言えるでしょう。
そう考えると、ドラムセットというのは本当によくできています。
低音(キック)高音(スネア)がデフォルトで装備されているんですから。
ドラムセットを使って、8ビートや16ビートを叩けばそれだけでグルーヴ発生の前提条件は満たしているんですね。
しかし同じドラムで同じリズムパターンを叩いても、グルーヴィなドラマーとそうでないドラマーがいる…。
その違いを説明するために、続いてBPMについて説明させてください。
グルーヴとBPM(テンポ)の違いを理解する
BPM(Beats Per Minute)とは、1分間にどれだけ拍を数えるかを数値化する単位のこと。
曲の速さ、テンポのことですね。(BPM60は1分間で60回鳴らすということ)
わたしたちミュージシャンはしばしば「グルーヴを良くするために正確なBPMで演奏しよう!」と練習します。
しかし、これは半分正解で、半分間違いと言えます。
なぜなら曲中にBPMが変化していっても(正確にBPMを維持しなくても)、グルーヴをちゃんと感じられる演奏は可能だからです。
例えばミスターチルドレンこの演奏です。
2:46からのサビと4:45からの大サビとでは明らかにBPM(テンポ)が速くなっているのがわかりますよね。
しかし大サビでグルーヴが崩壊しているでしょうか?
むしろ1曲をとおして聞いた時、大サビの方がグルーヴィで高揚感があるように聞こえないでしょうか?
このことから、グルーヴとBPM(テンポ)はまったく違う概念であり、必ずしもBPMを守ることがグルーヴの良し悪しに直結しないとわかります。
もう少しわかりやすい例でいうと、アンコールの拍手です。
みんなでゆっくり拍手をはじめると自然にだんだんと早くなっていきますよね。
実は人間はグルーヴを感じれば感じるほど、高揚感を感じて自然とテンポが速くなっていくそうです。
ですからグルーヴィな良い演奏をしようと思った時、BPMだけに着目してもダメなんですね。
とは言え、どんな曲でも限界のテンポってあります。
「グルーヴに高揚してテンポアップするのはアリ」と前提に立っても、音楽的に破綻するテンポになってはダメです。(アンコールの拍手もあるところ破綻して最初のテンポからまたはじまりますよね)
音楽的に破綻しない限界を見つける意味で、もうひとつ違った概念をご紹介します。
グルーヴには美しい「ストラクチャー」が必要である
ストラクチャーとはリズムの構造のこと。
音符と音符の距離感、またその割合と言っても良いかも知れません。
正式な音楽用語ではないかもしれませんが、プロドラマーの三原重雄さんが発信してくれています。
参考サイト:タイムとストラクチャー
ストラクチャーを説明するために(すごく)カンタンな図を示します。
例えば、一小節に3つの音符が並んでいるとしましょう。
これは音符同士が等間隔の1:1の割合で並んでいるとします。

ところが実際の人間の演奏は、等間隔でないことが多いです。
例えばこのような…。

仮に実際に両者の演奏を聞いてみた場合、当然感じるグルーヴは違うはずです。
これは一概に「正確な等間隔が良くて、等間隔でないのはダメ!」と言っているわけではありません。
演奏者の感性や曲の雰囲気、さらには聞く人の感性によって十分に気持ちいいグルーヴである可能性があるからです。(最初に示したようにグルーヴには無限の種類があるので)
ただしグルーヴが生まれない演奏があります。
それはストラクチャーが安定しない演奏。
例えばこのように1小節ごとに違うストラクチャーが登場したらどうでしょうか?

まるで歯並びが悪いガッタガタのリズムです。
もしこのように一小節という短い単位で違うストラクチャーが飛び出してきた場合、聞いている方はノレません。
正確に言えば、いちいち違うグルーヴなのでどれにノレば良いかわからないのです。
逆に、表面上は等間隔でないストラクチャーでも、しっかり維持されていばノレる(可能性がある)はずです。

ここにミスターチルドレンが曲中にBPM(テンポ)が変化しても、グルーヴィな演奏ができる秘密があります。
つまりミスターチルドレンの演奏は、BPMが変化しても、ストラクチャーが一定なんですね。

いわゆるハシる・モタるということが曲中で起きても、音符と音符の距離感の割合(=ストラクチャー)は完璧に維持されている。(しかもメンバー全員が)
だからわたしたちリスナーも一緒に盛り上がっていけるわけですね。
「BPMは正確に守れているのに、なーんかグルーヴがないな…」と感じる場合は、BPMをかたくなに守ることに終始してしまい、実は「ガタガタなストラクチャー」である可能性が極めて高いです。
そもそも人は「0コンマ何秒後の次にくるグルーヴ」を予測できるから、目の前でリアルタムに演奏される音楽にノレるわけです。
ストラクチャーが乱れていると、グルーヴが予測できないので、お客さんの体はピクリとも動かない…。
つまり盛り上がらないライブになってしまうわけですね。(かなしい)
そのためにも演奏者は一定のストラクチャーを提供する必要があります。
「ストラクチャーガタガタの演奏なんてしないよ!」と言っても、コレが実はなかなかできていない奏者も多いです。
特にギターとかボーカルの場合、フレーズが複雑であるのでストラクチャーを自覚すること自体が難しかったりします。
逆にドラマーの人は直感的に理解できたのではないでしょうか。
そこで続いては、グルーヴを良くするための練習とその考え方についてご紹介します。
グルーヴ感を高めるための練習方法と考え方
ここまでをまとめると、グルーヴの良い演奏をするためには、
- 質の高いストラクチャーを体得する
- そのストラクチャーを意図をもって維持する
という2点ができれば良いことになります。
そのためには、やはりクリック(メトロノーム)を利用して練習するのが基礎的かつ効果的。
ただし、先ほど言った通りテンポキープ(タイムキープ)のためにクリック使うのではなく、ストラクチャーの補助線としてクリックを使うことです。
クリックは等間隔で正確なストラクチャーを出し続けてくれる機械と言えるでしょう。
多くの場合、「等間隔で正確なストラクチャー」は曲にとって妥当である可能性が高い。
また独自のストラクチャー(グルーヴ)を生み出そうとしても、そもそも正確なストラクチャーを理解していないと無理な場合がほとんどだと思います。
実際はムリに個性を出そうとしなくても、曲の雰囲気やテンポ、奏者の感性や解釈、さらにはバンドメンバーとの兼ね合いによって、クリックほど正確なストラクチャーには結果的になり得ないことが多いと思います。
ですからまずはクリックを先生として、基礎となる正確なストラクチャーを体得しましょう。
例えばクリックを16分音符までしっかり鳴らしてあげて、曲を練習してみて下さい。
自分が奏でるフレーズのどの音符がどの位置であるべきなのか(まだどの休符がどの位置であるべきなのか)を確認しながら、丁寧に練習してみると良いでしょう。
BPMを下げて練習するにも効果的ですよ。
- グルーヴとは「ノリ」である
- グルーヴには休符が必要
- グルーヴには低音と高音が必要
- BPM”だけ”を頑なに守ってもグルーヴは生まれない
- グルーヴには適切なストラクチャーとその維持が必要
以上「グルーヴとは?グルーヴィな演奏をする方法」という話題でした。
難しい話でしたが、お役に立てたらうれしいです!