ロックバンドは時代遅れ?衰退から再評価へ、令和のリアルな考察

ロックバンドは時代遅れ?衰退から再評価へ、令和のリアルな考察

「ロックバンドってもう時代遅れじゃない?」

近年はそんな声をよく耳にします。
確かに、ヒットチャートを見渡しても、ラッパーやソロシンガー、アイドルばかり。
バンドが音楽の中心だった時代を知る身としては、ちょっぴり寂しくなることもあります。

でも、本当にロックバンドは衰退したのでしょうか?!

この記事では、ロックが「時代遅れ」と言われる理由、そしてそれでもなおバンド活動を続ける意味を、2025年の視点で深掘りしていきます。

2017年、ヒップホップ全盛時代の到来

いまの潮流を考えるうえで、まずは2017年のデータに注目したいところ。

米調査会社ニールセンが発表した 2017 U.S. Music Year-End Report によれば、この年に R&Bとヒップホップがアメリカ音楽市場で初めてトップジャンルとなりました。

  • 音楽消費シェア:R&B/ヒップホップが25.1%、ロックは18.1%
  • オンデマンド・ストリーミングでは30.3%を記録
  • トップ10のうち7曲がラップ

つまり、ラップやトラップが音楽業界の主役に躍り出た、象徴的な年でした。

一方その頃、日本のチャートはAKB48や乃木坂46などのアイドルグループとJ-POPが席巻。つまり、「バンド」というフォーマット自体が、グローバルでもローカルでも主役ではなくなりつつあるというわけです。

ロックバンドが「時代遅れ」と言われる3つの理由

1. コンテンツの供給速度に限界がある

今の音楽シーンは「出し続けてナンボ」です。
YouTube、TikTok、Instagram、Voicy…どこを見てもアーティストが日々新しいコンテンツを発信しています。

しかし、バンドという形態はどうしても動きが遅い。
スタジオでの録音や練習、メンバー間の調整、機材の問題など、気軽にライブ配信や即興パフォーマンスができるラッパーやソロ勢とはスピード感が違うのです。

その結果、どうしても「コンテンツの鮮度」で負けてしまう。

2. お金がかかる構造から脱却できていない

たとえばDTMアーティストなら、自宅のPCひとつで作曲・録音・配信まで完了します。

Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅを手がけた中田ヤスタカさんのようなスタイルなら、プロデューサー1人+シンガー1人で完パケできてしまう。

一方でバンドは、ドラム、ギター、ベース、ボーカルに加え、レコーディングエンジニアやミキサー、マスタリング担当…1曲を仕上げるまでに多くの人とお金が必要です。

この「非効率性」が、サブスク収入が主流の現代では大きなハンディになります。

3. 「集団」であることの限界

TikTokで自撮り演奏や歌を投稿したり、インスタで弾き語りをアップしたり。
そんなソロアーティストは、スマホ一台で世界に発信できます

しかしバンドは、メンバー全員が集まらないと何も始まらない。
ライブ配信ひとつ取っても、スタジオ・ミキサー・機材トラブルなど、複数人だからこその難しさがある。

この「機動力のなさ」が、今のスピード社会では致命的です。

それでもロックは“死なない”──再評価の兆し

とはいえ、ロックが終わったわけではありません。

  • 近年はマネスキン(Måneskin)やThe 1975といった海外のバンドが人気
  • 日本のフェスでは、いまだにロックバンドの集客力が圧倒的
  • Z世代を中心に“生演奏バンド”の価値を再発見する動きも

つまり、「効率では測れない魅力」こそが、ロックの真骨頂なのかもしれません。

ロックバンドが生き残るために必要なこと

① 長く続けること

今は「売れたら過去作も再生される」時代。
つまり、10年やっているバンドは、10年分のコンテンツを武器にできるということ。

ストリーミングの世界では、「在庫を持たずに販売できる」という強みもあります。
CDと違って、再販のリスクがない。
だからこそ、地道に作品を積み上げる価値は大きいのです。

② 小さく稼ぐ仕組みを持つこと

  • サブスクやYouTubeでの広告収益
  • BGMサイトやオーディオストックへの登録
  • note・FANBOXなどでのファン課金
  • オンライン講師や副業での安定収入

なにも「音楽一本で食っていく」だけが正解ではありません。
兼業でも、好きなバンドを続ける仕組みがある方が強い時代です。

まとめ:非効率こそがロックの本質かもしれない

今の社会は、速さと効率を極めています。
そんな中で、ロックバンドという存在は、あまりにも不器用で、あまりにも非効率。

でも、だからこそ美しい。

たったひとつのライブのために何週間もかけて準備をする。
そんな“非効率の尊さ”に共鳴する人は、きっとこれからも存在し続けるはずです。

ロックバンドは、もしかすると主役ではなくなったかもしれません。
でも、脇役でさえ人を惹きつける力がある。
それがロックというカルチャーの底力だと思っています。

時代に逆らって生き残る。
それもまた、ロックの精神ではないでしょうか。

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