アナログレコードを作れるサービス5選【費用・作り方まとめ】

近年、世界的なアナログレコード人気の再燃により、「自分の音源をレコードでリリースしたい」と考えるアーティストも増えてきました。
そこでこの記事では、実際にアナログレコードを制作できる国内サービスを5つ厳選して紹介し、それぞれの特徴・費用感・おすすめ用途などをまとめました。
レコードのサイズや仕様の選び方も解説していますので、「レコードってどう作るの?」「いくらかかるの?」という疑問がある方は、ぜひ参考にしてください。
アナログレコードを作るには?基本の流れと費用感
なぜ今レコードを作るアーティストが増えているのか?
デジタル全盛の今、あえてレコードを作るアーティストが増えています。
ジャケットの存在感や盤に針を落とす所作など、音楽をひとつの「作品」として届ける手段として、アナログならではの魅力が見直されています。
実際にレコードの売上や製造枚数は近年、増加傾向にあります。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000586.000010908.html
リスナーにとっては配信では味わえない「所有する喜び」や「飾れる楽しさ」もレコードの魅力。
また1枚から作れるサービスが登場したことで、個人レベルでもチャレンジすることも可能になりました。
毎年春の「レコード・ストア・デイ」も見逃せません。
世界中のアーティストがこの日にあわせて限定盤をリリースし、レコードショップには行列ができるほどの盛り上がりを見せています。
懐かしさではなく、いま改めて“表現の場”としてレコードが選ばれています。
レコードプレスの製造過程
- 音源データを用意(マスタリング済)
- カッティング(原盤の制作)
- ラベル/ジャケット印刷
- プレス(複製)またはカッティング(1枚ずつ)
- 梱包・納品
わたしたちアーティストが用意するものは、音源とジャケットデザインのデータ。
発注の流れは基本的にCDと同じです。
費用の目安は?
- 少数(1枚〜):3,800〜15,000円×枚数
- プレス(100枚〜):12インチなら約30万円ほど
- オプション追加(カラー盤、歌詞カードなど)でさらに加算
さらにデザインをデザイナーさんにやってもらうと考えると、プラスして予算を確保しておく必要があります。
アナログレコードを作れるおすすめプレス会社5選【費用と特徴を比較】
以下からは具体的なレコードプレス会社をご紹介します。
費用やこだわりポイントを比較しながら、5社をピックアップしました。
サービス名 | 料金目安 | 特徴 | おすすめ用途 | 公式サイト |
---|---|---|---|---|
WOLFPACK JAPAN | 100枚 約23万円 | 海外提携で高品質 | 最小ロット100枚〜。大量プレス向け | 公式サイト |
cut&rec | 1枚 3,800円 | 国内生産/ジャケット・ラベル印刷込み | 1枚〜50枚まで。小ロット向き | 公式サイト |
ART VINYL .TOKYO | 1枚 3,800円 | 手作業の温かみ/特急あり | 1枚から10枚まで。プレゼントやノベルティに最適 | 公式サイト |
e-vinyl.tokyo | 100枚 約20万円 | プラスで全国流通サービスあり | 最小ロット100枚〜。大量プレスむき | 公式サイト |
Record Express | 50枚 約14万円 | セール・キャンペーンも | 最小ロット50枚〜。インディーズバンドむき | 公式サイト |
※料金目安は主に「7インチ ジャケットあり」を記載しています。
WOLFPACK JAPAN(ウルフパック・ジャパン)

チェコの世界最大級レコード工場「GZ Media」と提携し、日本でも本格的なレコードプレスを可能にしたサービス。
100枚からの大量ロットに対応し、品質・納期ともに信頼性が高く、国内外のプロアーティストにも利用されています。
ダウンロードコードの封入など、最新トレンドに対応しているのも魅力。
※1枚から作成可能だったダブプレート製作は2024年9月から停止しています
cut&rec(カットアンドレック)

1枚から注文できるレコード制作サービス。
カッティング、ラベル、ジャケット印刷まで一括で対応しており、個人用途からギフト、記念制作まで幅広く活用できます。
おしゃれなサイトで注文しやすく、初心者にも親切。
ART VINYL .TOKYO(アート・ヴァイナル・トーキョー)

アナログ機材を使った手作業によるカッティングが特徴の老舗サービス。
もとは「CUT BY 1977 RECORDS」として活動していたプロ集団で、1枚からの少数制作にも柔軟に対応。
DJ用やプレゼント用としても人気です。
e-vinyl.tokyo

7インチと12インチに対応。
プレスと合わせて全国ショップや大手オンラインストアへの流通も追加料金でできます。
Record Express(レコード・エクスプレス)

・価格優先プラン: 納期に余裕がある方へのお得な設定
・納期優先プラン: お急ぎの方への納期を優先した進行
・小ロットプラン: 25枚から100枚までの12インチ限定
・エコ仕様プラン: 地球環境に配慮した再生バイナル製作
などフレキシブルなプランがメリット。
キャンペーンやセールが多く、比較的に小規模なインディーズバンドでもトライしやすい価格設定になっています。
レコードを作るなら何インチ?サイズの選び方ガイド
レコードには主に「7インチ」「10インチ」「12インチ」の3つのサイズがあります。
どれを選ぶかは、収録する楽曲の長さや用途によって決めましょう。
基本は12インチがおすすめ
フルアルバムをレコードとしてリリースしたい場合は、12インチが王道です。
- 片面18〜22分ほど収録できる
- 音質を保ちやすい
- ジャケットサイズが大きく、作品としての存在感がある
- 一般的なレコードプレイヤーで再生しやすい
配信やCDとは違う「作品」としての特別感を出すなら、12インチが最適。
少数ロットやグッズ向けには7インチも
1曲だけの収録やライブ物販、プレゼントなどには7インチもおすすめです。
- 片面約4〜5分まで収録可能
- 小ぶりでかわいらしく、ノベルティとしても人気
- 製造コストが比較的安い
特別感のある限定グッズとして最適。
10インチはこだわり派に人気
10インチはEPやミニアルバム用に使われることが多く、ちょっとマニアックな雰囲気があります。
- 収録時間は片面約6〜9分
- 他と被らない特別感がある
- レコードファンの間では「オシャレ」と人気
人と違うフォーマットで作品を出したいときにはぴったりです。
レコードをプレスするなら?知っておきたい制作オプション一覧
レコードを作ると決めた後に迷うのが「どこまでこだわるか」。
音だけでなく、ジャケットや歌詞カード、DLコードなど選べる仕様がたくさんあります。
ここでは代表的なオプションを紹介します。
ジャケットの仕様
- シングルジャケット:紙1枚のシンプルな仕様。コストを抑えたい人向け。
- ゲートフォールド(見開き):LPサイズを開くと2面になる豪華仕様。2枚組や歌詞カードを入れたい人におすすめ。
歌詞カード(インサート)の有無
- あり:作品としての完成度を高めたい、歌詞をしっかり届けたいなら必須。
- なし:制作費を抑えたい場合や、配信ページで歌詞が読めるなら省略もあり。
カラー印刷か白黒かでも価格が変わるので、用途に応じて調整しましょう。
レーベル面の印刷
盤の中心にあるラベル部分に、曲名やロゴを印刷することもできます。
見た目の仕上がりにこだわるなら、デザインを用意しておきましょう。
ダウンロードコード封入
スマホでも音源を聴いてもらうために、ダウンロードコードを同封するのが主流です。
WolfPackだとコード発行も簡単です。
テストプレス(試作盤)
本番前に5枚程度プレスして、実際の音質を確認する工程です。
音にこだわりたいなら必須ですが、そのぶん追加費用がかかります。
その他オプション
- 盤カラーを黒ではなくカラー盤・マーブル盤にする
- 帯(OBI)をつける
- 限定ナンバリングやサイン入り仕様
迷ったら
予算と目的で、こだわる部分と省く部分を分けて考えるのがおすすめです。
- 本格リリース:ゲートフォールド+歌詞カード+DLコード+テストプレス
- ライトなグッズ:シングルジャケット+DLコードのみ
「作品としての重み」を出したいか、「コストを抑えて届けたいか」で優先順位をつけてみてください。
アナログレコードの販路・売る場所
レコードが完成したら、いよいよ流通・販売を開始しましょう。
ライブ物販の他に、以下の選択肢があります。
日本のレコードショップ(ディストリビューター)
アナログレコードの流通としては、
- DISK UNION
- JET SET
が有名です。
それぞれ公式サイトから問い合わせお願いします。
JET SET 当社卸部での流通や、制作をご希望のレーベル、アーティスト様窓口
アーティスト公式オンラインストア(BASE)
アーティストが公式オンラインストアで売るのも有効です。
これは、いわば「ネット上の手売り」で、ファンに直接レコードを届けられるのが魅力です。
いくつかのサービスがありますが、BASEが維持コストが無料から使えてわかりやすいのでおすすめです。
レコードだけでなく、あらゆるグッズやデジタルデータも販売できるので、必ず使いたいサービスと言えます。
こちらの解説↓も合わせてチェックして下さい。
レコード製作のよくある質問(FAQ)
プレス業者によっては1枚から制作可能です。
小ロット(1〜50枚)であれば2〜4週間程度、大量プレスは2〜3ヶ月かかることが多いです。時期やオプションによって前後します。
一般的にはWAV形式(44.1kHz~48kHz/16bit~24bit)が推奨されます。
必須ではありませんが、推奨されます。
CDや配信用の音源はデジタル向けに処理されていますが、レコードでは針や溝の物理的特性に合わせた調整を行うと音圧・音質ともに向上します。できればレコーディング前にエンジニアさんに相談しましょう。
JASRACなどの管理団体を通じた申請と使用料の支払いが必要です。無許可での制作・販売は違法となるため、注意が必要です。
ライブ会場での手売りのほか、オンラインショップ(BASEなど)や、ディストリビューター(DISK UNION・JET SETなど)への委託があります。販売戦略に応じて選びましょう。
現在の相場は以下の通りです:
- 12インチのフルアルバム:4,000〜6,000円(再発・限定盤は7,000円超も)
- 7インチシングル:2,000〜3,000円
- 10インチEP・ミニアルバム:3,000〜4,500円程度
インディーズなら少し抑えめでもOKですが、安くしすぎると原価割れする可能性があるため、コストとのバランスを考えて設定することが重要です。
まとめ:アナログレコード制作は”知識”と”愛”が必要
アナログレコードは音楽リスナーにとって確かに価値のあるアイテムだと言えます。
これからも根強い人気が続いていくでしょう。
一方でマニア向けの商品であることも確か。
そうなると、「そのマニアに何が、どう響くのか?」を肌感覚で理解しておく必要があります。
例えばアマチュアバンドやインディーズバンドなら、少なくともメンバーにレコードオタクがいて欲しいところ。
日々、レコードショップ巡りをしたり、レコード収集をしたりしている人なら、きっとその魅力を理屈抜きでわかっているでしょう。
どんなレコードを作れば魅力があるか?
どこで販売すれば売れそうか?
それはリスナー(消費者)として豊かな経験がないと、なかなかわからないことです。
実際に経験して、身銭を切って初めてわかる、レコード文化に対する知識と愛と言えます。
レコード製作は決して安くありません。
リスナーとしての背景がなく「なんとなく逆張り」「流行っているから」といった理由でレコードを作っても、費用ばかりが増え、バンドにとって効果的なリリースにならないでしょう。
関連:その他の音源リリース方法を総まとめ
デジタルでもアナログでも、音源をリリースする方法は色んな選択肢があります。
改めてレコードを作る意味を考えるうえでも、ぜひ網羅的に検討してみて下さい。
関連記事↓にて、リリースの方法をまとめています。