ミュージシャンのファンクラブの作り方|ゼロから始めるコミュニティ運営

「ミュージシャンとしてファンクラブを作りたいけれど、どう始めたらいいのかわからない」
そんな方に向けて、この記事ではファンクラブの作り方をゼロからわかりやすく解説します。
ファンクラブは、ただの“応援団”ではありません。
活動の資金源になり、コアファンとのつながりを深める場所でもあります。ですが、始めるタイミングや使うツールを間違えると、うまく機能しないことも。
本記事では、SNSの有料機能から本格的なファンクラブ運営サービスまで、ミュージシャンがファンクラブを作る具体的な方法とステップを紹介します。
これからコミュニティを育てていきたい方は、ぜひ参考にしてください。
そもそもファンクラブって必要?
ファンクラブの必要性。音楽ビジネスが「スーパーファン」モデルへ移行している
アメリカを中心に、音楽ビジネスのトレンドとして「スーパーファン」が挙がってきています。
スーパーファンとは、既存のファン以上の熱狂的ファンのこと。
彼らは積極的に行動し、アーティストに対する経済的貢献も惜しみません。
日本でも「推し活」の名の元に、スーパーファンモデルが定着しています。
そしてスーパーファンとアーティストをつなぐ“場”として、ファンクラブは理想的です。
つまりファンクラブは、音楽ビジネスにとって欠かせない場所であると言えます。
そもそもスーパーファンモデルが騒がれている理由は、先進国において音楽サブスクの有料会員数が頭打ちになっているから。
音楽サブスクはアーティストにとって主要な収入源であるものの、さらなる成長のためにはファンクラブ(スーパーファン)が欠かせないというわけです。
ファンクラブは最終目標。早すぎると逆効果にも
一方で、アマチュアからインディーズのバンドがスーパーファンモデルをすぐに取り入れるべきではありません。
ファンクラブ運営にはそれなりの労力が必要で、提供するコンテンツも倍以上に増えてきます。
そしてその「運営術」は、音楽を作る力とはまた別物。
アーティストの求心力は音楽に依存していますよね。
ファンクラブを始めることで忙しくなり、音楽を作る力が毀損されては意味がありません。
つまり、ファンクラブを作る → 忙しい… → 音楽⇓ → ファンが増えない
という悪循環は避けなければいけません。
そうならないためには、
- 十分な音楽力がある
- サポートしてくれるスタッフ がいる。(ないしメンバーに余裕がある)
- 十分なファンが存在している
などいくつかの条件が必要でしょう。
ファンクラブ運営がバンド活動(音楽ビジネス)の最終目標であることは間違いありません。
しかしそこに至るまでの段階はあります。
まずはやはり「音楽配信」と「ライブ集客」を目標とし、バンドを育てることが重要です。
まずはSNSのコミュニティ機能がおすすめ
そうなると「じゃあ、どのぐらいになったらファンクラブ運営してよいの?」という疑問が残るかと思います。
そこでおすすめしたいのが、SNSの有料コミュニティ機能。
ファンクラブ挑戦の”観測気球”として、シンプルな有料コンテンツをSNSから発信します。
そこで手応えがあれば、本格的なファンクラブに移行するというわけです。
SNSで有料コミュニティを運営するメリットのひとつは、
集客と販売が同時にできる
という点。
以下で紹介するYouTubeにしてもnoteにしても、そもそもそのプラットフォーム内で無料コンテンツを発信することで拡散(バズ)が起こり得るプラットフォームです。
無料コンテンツを発信して集客しながら、ときどき有料コンテンツを販売できる。
ひとつのプラットフォームでシームレスに活動できるので、やはり会員数は増えやすくなります。
また大手SNSは既にユーザー(ファン)が決済手段を登録している場合が多いでしょう。
きな臭い言い方をすれば、すでにSNSがユーザーの財布を握っているわけです(笑)
なので、ユーザーはデジタルコンテンツにお金を払い慣れています。
ユーザーからしても「300円のメンバーシップなら、ちょっと試してみよう」と軽い気持ちで課金しやすいと言えます。
例えばみなさんも、Amazonや楽天以外でネットショッピングする時に、カード情報を入力するのがちょっと面倒に感じたことはないでしょうか?
その“ちょっとした面倒さ”が、購入の意欲をそいでしまうことが多々あります。
まとめると、SNSの有料コミュニティ機能は集客 → 決済までの導線スムーズなので、本格的なファンクラブよりも会員数という意味では増えやすいと言えます。
SNSのファンクラブ的有料コミュニティ機能
YouTubeメンバーシップ
- 手数料:30%
- コンテンツ:動画
ロックバンド、音楽アーティストにとってYouTubeは言わずもがなの主戦場。
すでに少なくないチャンネル登録者数と再生回数があるバンドも多いのではないでしょうか。
その意味で、YouTubeの有料コミュニティ機能であるメンバーシップはまず挑戦するファンクラブとして最適だと言えます。
Live動画の限定公開、メンバーのラジオや座談会など、発信するコンテンツもイメージしやすい。
また現在はPCからの観覧に限りますが「投稿」機能で文章も発信できます。
みなさんも何かの動画を見た時に、そのチャンネルの「メンバーシップ限定」のバッヂがついた動画がタイムラインに表示されたのを見たことをあると思います。
自然な導線をYouTube側が作ってくれているのも、やはりメリット。
メンバーシップの始め方は公式情報をご覧ください。
note メンバーシップ機能
手数料:10〜20%
コンテンツ:文章、画像、音声
代表的なSNSブログサービスであるnoteも、有料コミュニティを作れるのが強みです。
noteではサブスク(ファンクラブ)を作る方法として「メンバーシップ」と「有料マガジン」の2つがあります。
メンバーシップ機能だとファンと双方向にコミュケーションがとれるので、ファンクラブとしてはメンバーシップのほうがよりふさわしいと言えるでしょう。
一方でnoteのユニークな点は、マガジンやノート(記事)の単品販売もできること。
例えば、
- 弾き語り音源を100円で売ってみる
- ライブ写真を100円で売ってみる
といったファンクラブのさらに前段階の有料コンテンツを試せます。
動画をnote自体にアップロードすることはできませんが、YouTubeに限定公開した上で、そのURLをメンバーシップ内でシェアすることは可能です。
その他、Instagramも本国でサブスク機能を提供しています。
今後、日本でも展開される可能性もあるので、わかりしだい追記したいと思います。
本格的なファンクラブサービス
メリット:手数料が安い
ファンクラブサービスはSNSのコミュニティ機能より大抵の場合、手数料が安いです。
なので、例えばYouTubeメンバーシップの会員数がそれなりのスケールになった(あるいは頭打ちになった)場合、ファンクラブサービスへ移行することでより利益を上げることができます。
手数料はパーセンテージですから、会員数が増えるほど実際の収入に大きな差異が出てきます。
一方でファンクラブサービスはSNSのような集客機能がないので、そもそもファンクラブを成立させるハードルが高いのがデメリット。
なのでファンクラブの第二段階として、以下のサービスはおすすめだと言えます。
1. BASE(コミュニティApps):物販からスムーズに移行

- 手数料:5%
- コンテンツ:限定商品、限定URL
ウェブショップ構築サービスのBASEには「コミュニティApp」という追加機能があります。
これを利用すると、ショップ内に有料コミュニティを作ることが可能に。
コミュニティメンバーだけが購入できる商品を販売することができます。
ただ商品以外のコンテンツは、なんらかの方法で別途ページを用意して「限定URL」から公開する必要があります。
BASE内だけであらゆるコンテンツの作成・公開が完結できるわけではないので、注意が必要です。
一方で手数料が5%と安いので、作業に苦労しない人なら、選ぶ理由も多くなるでしょう。
またBASEの大きなメリットは、既にグッズやCDを購入してくれたファンに直接アプローチをかけられるところ。
先ほど「大手SNSには決済手段を既に登録しているのメリット」と言いましたが、BASEも同じような状況であると言えます。
そもそもBASEはグッズやCDなどを販売するバンド公式オンラインストアが作れるサービスです。
バンド活動にとっては大きな力になるので、ファンクラブの有無に関わらず利用したいサービスと言えるでしょう。
2. YOOR(ユア)|本格的ファンクラブを手軽に

- 手数料:18%
- コンテンツ:チャット、文章、画像、動画、ダイレクトトーク、スクラッチ
YOORは一般的なデジタルコンテンツを始め、サロン内専用のチャットルームやダイレクトトークなど、本格的にファン向けコンテンツを発信できます。
それでいて事前審査なし、初期費用・固定費用が無料なので、誰でも気軽に始めらるのがメリットです。
ファン向けに複数の課金プランも設定可能。
またお試し無料期間も設定できます。
コンテンツもプランもフレキシブルなので、幅広くいろんなアーティストにおすすめできます。
3. OFUSE|ファンレターからメンバーシップまで

- 手数料:10%
- コンテンツ:文章、画像、動画(YouTube)、ラジオ
OFUSEは元々、クリエイターに「応援レター(ファンレター)」を送れるサービスとしてスタートしました。
例えばファンが500円の応援レターを送ると、クリエイターは手数料を差し引いてそれを受け取れる仕組みです。
そのOFUSEにも月額課金タイプのメンバーシップ機能があります。
発信できるコンテンツも必要十分で、シンプルな管理画面がわかりやすい、とても使いやすいサービスです。
YOORのようなチャット機能はありませんが、音声をライブ配信できるラジオ機能があります。
手数料も抑えめで、バランスのとれたサービスと言えるでしょう。
4.bitfan|オールインワンサービス

- 手数料:20%
- コンテンツ:文章、動画、画像、ライブ配信、グループチャット、スクラッチ、bitfanポイント
bitfanはさまざまなサービスを一元的に使えるオールインワンサービスです。
特にユニークな点は、ファンにbitfanポイントを付与できる点。
グッズ購入やファンクラブの継続、あるいはログインボーナスのようなものでポイントが付与でき、ポイントによって会員ランク付けが可能です。
積極的な行動や購買を促すシステムとして、近年よく見かけるビジネスモデルです。
一方で、できることが多いので、「あれもこれもやった方が良さそう」と迷ってしまうで注意。
bitfanが提供するサービスでもどれもトレンドを抑えており、なんだか「儲かりそう」が気がするので(笑)
冒頭で言ったとおり、ファンクラブ運営のリソースが大きすぎて音楽制作に悪い影響が出てはしょうがありません。
実際のところ、アマチュア〜インディーズバンドでbitfanをフル活用してマネタイズするのは現実的ではないでしょう。
スタッフがいる組織として利用するならアリです。
bitfanを利用する時は、特に「何を利用して・しないのか」を明確に考えておきましょう。
また手数料もやや高いのがデメリット。
おおむね、自分たちの音楽活動のスケール感と良く照らし合わせて利用を検討するのが良いでしょう。
ファンクラブで配信するおすすめコンテンツ
ファンクラブでは「限定」「希少」「優先」の3つを意識したコンテンツを発信しましょう。
- 限定:数に限りがある。会員しか見れない
- 希少:メンバーのプライベート感のある投稿
- 優先:チケットの先行予約。情報の先出し
特に大事なのは希少です。
ファンとの距離感を縮めるには、より素の自分を表現するのが良いでしょう。
そもそもファンクラブは、一般のSNSより炎上リスクがグンと下がります。
より素の自分を表現しやすく、ファンもそれを期待している部分は大きいです。
とは言え、「誰と付き合っている」とかそういうゴシップではありません(笑)
まずは表で話してこなかった「影響を受けたアーティストの話」や「10代の頃の青春エピソード」など、共感を呼びそうなものからチャレンジすると良いかもしれません。
まとめ|ミュージシャンがファンクラブを始めるには?まずはSNSのコミュニティ機能から試してみよう
タイプ | サービス名 | 手数料 | コンテンツ内容 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
SNS | YouTubeメンバーシップ | 30% | 動画、投稿、ライブ配信 | YouTube内で完結。集客&決済導線が強く、音楽系と相性抜群 |
SNS | noteメンバーシップ | 10〜20% | 文章、音声、画像(動画はリンク共有) | 単品販売も可能。文章中心だがファンとのやりとりも◎ |
本格 | BASE![]() | 5% | 限定商品、限定URL(別ページでの管理が必要) | 物販との相性が良い。既存ファンへのアプローチがしやすい |
本格 | YOOR | 18% | チャット、動画、文章、画像、ダイレクトトーク等 | 初期費用・審査なし。柔軟なプラン設計やお試し期間の設定も可能 |
本格 | OFUSE | 10% | 文章、画像、動画(YouTubeリンク)、音声(ラジオ) | シンプルで使いやすい。元はファンレター型だがメンバーシップも対応 |
本格 | bitfan | 20% | 文章、画像、動画、配信、チャット、スクラッチ等 | 機能豊富なオールインワン型。ポイント制あり。中〜上級者向け |
いきなり立派なファンクラブを作る必要はありません。
まずSNSから「小さく始めてみる」ことで、ファンのリアクションやニーズも見えてきます。
活動に合ったサービスを選び、ファンとの関係を少しずつ育てていきましょう。