バンドの一発録りレコーディングとは?メリット・デメリット、バラ録りとの比較

「“一発録り”って、実際にやるとどうなるんだろう?」
一発録り(いっぱつどり)とは、バンドメンバー全員が同じ空間で同時に演奏し、1回のテイクで楽曲を録音する方法です。
映像分野では「一発撮り」とも呼ばれますが、ここでは主にロックバンドのレコーディング手法としての一発録りを解説します。
そもそもバンドのレコーディングには、大まかに2つの方法があります。

- 一発録り → 同じ空間で同時に演奏して一気に楽曲を録音する
- バラ録り → それぞれの楽器を順番に録音して重ねていく
この記事では、一発録りのメリット・デメリットをわかりやすく紹介し、さらに実際に筆者が試した「一斉に演奏するけれど、一発録りではない」方法もあわせて解説します。
これで自分たちのバンドが本当に一発録りでレコーディングをするべきかどうかがわかります。
レコーディング方法で悩んでいるバンドマンの方はぜひ参考にして下さい。
一発録りレコーディングのメリット|ライブ感・勢いをそのまま音源にできる
一発録りはメンバー全員が「せーの」で演奏して録音するので、普段のリハーサルやライブと演奏環境が近いです。
そのため「勢い」とか「熱量」を大事にしていてる「ライブバンド」は、一発録りを志向する傾向があります。
ジャンルで言うとパンクとかガレージです。
例えばレジェンドパンクバンドのギターウルフが、クリック使ってバラ録りしてたらちょっと幻滅じゃないですか(笑)
ギターウルフはレコーディングなのにアンプに乗ってそこからジャンプして演奏して、その一回だけで帰っていったという逸話を聞いたことがあります(笑)
あとは独特のグルーヴを突き詰めているバンドはやっぱり一発録り。
わたしの好きなバンドだと、ミッシェルガンエレファントとか一発録りでなければ出ない魅力を持っています。
メンバーそれぞれのスキルと個性が複雑に絡み合って唯一無二のバンドサウンドが生まれる。
一発録りはそういったロックバンドの醍醐味を音源にできる方法です。
一発録りレコーディングのデメリット|やり直しがきかず難易度が高い
一発録りはそのレコーディング環境から、録音のやり直しが難しいのがデメリット。
同じブース内で全ての楽器を鳴らすようなレコーディング環境にすると、それぞれのマイクにどうしても音カブリが出てきます。
そのため後からパンチインして演奏を直すことができないんです。
またひとりがミスしたら、全員で曲の頭から演奏し直さないといけません。
一発録りは一斉に演奏するから、効率的にスピーディにレコーディングが終わるかと思いきや、実際には何度もリテイクしてかえって時間がかかってしまうことも少なくありません。
また音カブリがあると、ミックスで大幅に音を加工するのが難しい。
例えばギターだけにエフェクトをかけようとしても、ギターのマイクにはドラムの音も入ってしまっているためにドラムにもエフェクトがかかってしまいます。
そのためレコーディング時に厳密に音作りをする必要があります。
一発録りでも複数のブースがあるスタジオなら、アンプをそれぞれのブースに配置できるので音カブリなくレコーディングできます。
またアンプを囲って防音する設備(アンプボックス)や遮音板があるスタジオなら、音カブリを軽減してレコーディングすることも。
ですが、そういった設備が整ったレコーディングスタジオは、総じて料金が高く予算を圧迫してしまいます。
アマチュアバンドの場合、完璧に設備の整ったレコーディングスタジオを利用することが難しく、音カブリを承知の上で一発録りに挑むことが多いと思います。
総じて一発録りは、メンバー自身の演奏力に依存したレコーディング方法と言えます。
ミックスやマスタリングでカバーするのは限界があります。
そもそも「独特のグルーヴ」みたいな演奏を表現するのは、ミュージシャンとして相当に高度です。
非常に難易度が高いのが、一発録りレコーディングだと言えるでしょう。
一発録りとバラ録り、どっちがいい?ロックバンドのレコーディング選び方
まとめると、
- 一発録りのメリット → 勢いが出る。バンドサウンドの醍醐味
- 一発録りのデメリット → やり直しができない。実力がそのまま出る
ということでした。
一発録りかバラ録りかどちらを選ぼうか考えた時、まずは自分たちの音楽性から考え、予算を考えます。
そして一発録りで十分な実力を発揮できる演奏力があるかどうかも検討しましょう。

近年の音楽シーンではEDMやヒップホップの流行でバンドサウンドが聞かれることが以前より少なくなってきましたね。
だからこそバンドならではのグルーヴやアンサンブルを表現したい気持ちもあると思います。
とは言え、メンバー全員にそれなりの演奏力が求められるのも事実。
むしろバラ録りに挑戦したほうが、その時点では実力を伸ばすのに役立ったりもします。
また「一発」「バラ」に関わらず、レコーディングのクリックを使うかどうかも検討が必要です。
クリックについては、関連記事も合わせてチェックしてみて下さい。

以下からは実際にわたしがバンドで試したレコーディング方法をご紹介します。
一発録りとバラ録りの折衷案のようなやり方です。
【おすすめ】一斉に演奏するが、一発録りではない方法【体験談】

わたしがセルフレコーディングした際に実際に試して、手応えのあった方法がこちらです。
ドラムはマイクを立てて、生音を録音。
ベースはライン入力で録音。
そしてギターとボーカル(ギターボーカル)は、ライン入力で仮録音する方法です。
こうすると、ライブやリハーサルのように一斉に演奏する状態なので、グルーブは生まれやすい。
そしてドラマーは尺を間違うことがありません。
ベースはアンプでバラ録りせず、そのままライン録音した音源を採用します。
そうしてリズムトラックができたら、改めてギターをアンプ出力でマイク録音。
ボーカルも録音し直します。
ただボーカルに関しては仮歌の方がかえって勢いがあり、そのまま採用することもありました。
ちなみにわたしたちは吉祥寺のスタジオGOATEEというセルフレコーディングスタジオを使って行いました。
GOATEEは現在、ブースが一つ増えました。

これにより、
- ドラム(生音)
- ベース(ライン)
- ギター1本(生音) or ボーカル
まで同時に本番テイクを録音できるようになりました。
3ピースバンドなら、ボーカリストがコントロールルームに立つことで4つの音全てを同時に録音しつつ、音被り無しで一発録りできるかもしれません。
もちろん、セルフではないレコーディングなら必ずエンジニアさんとの打ち合わせが必要です。
その際は言葉で説明するとわかりにくいので、ぜひこの記事のイラストなどを参考資料にしていただければと思います。
まとめ|一発録りレコーディングは「ライブ感」を重視するバンドにおすすめ
一発録りは、ロックバンドらしい勢いやグルーヴを音源に閉じ込められる魅力的な方法です。
ただし、ミスの修正が難しく、メンバー全員の演奏力が試される一面もあります。
もし演奏力に不安がある場合は、まずバラ録りや仮録音を組み合わせてみましょう。
「バンドらしさ」と「完成度」の両立がしやすくなります。
最終的には、あなたのバンドが目指すサウンドに合ったレコーディング方法を選ぶことが大切です。
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