なんと!スリーピーヘッドジェイミーのすわさんから質問いただきました。
先日、発表があったAmazonのDODについて。
これって、画期的なのは間違いないんだけど、
明らかにCDの主戦場である会場物販では売れないわけで、
となると最低ロットはプレスしないといけない訳で、
となると自分でBASEとかネット販売した方がいいよね。
ってならない?のかな?https://t.co/QPWqV4Pp7K— すわだいすけ (@suwadaisuke) 2016年12月6日
この辺りの意見を書いたご本人 @Soh_RundabanSP に伺いたい。
— すわだいすけ (@suwadaisuke) 2016年12月6日
答えになっているかはわかりませんが、CDを売る方法を何パターンか整理した後に、ぼくの考えも書いてみたいと思います。
では現状、CDを売るにはどんな方法があるのでしょうか?
パターン①通販はAmazonのDOD、ライブ物販はCD-RのDIYジャケット
まずDODについて復習しておきます。
公式サイトによると、以下の通り
ディスク・オンデマンド(Disc on Demand)は、お客様のご注文を受けてからAmazon.co.jp がCDを製造し、出荷するサービスです。主に、廃盤商品やCD化されていないコンテンツを、コンテンツの権利保有者であるメーカーの許可を得て商品化しています。コンテンツは、市販品と同等の音質でCD-Rに記録し、市販品と同等のケースに入れてお届けします。
そう、コレCD-Rなんですよね。
「CD-Rはイヤ!」って人はまず選択肢からはずれますよね。
DODのデメリットは
- CD-Rだから、ちょっと簡素
- ジャケットはこだわることはできない
- 売り上げ枚数によってはプレスCDの方が利益がでる
対してDODのメリットは
- コストはTUNECORE JAPANに支払う配信料のみ(1アルバム/年間5000円程度)
- 受注生産なので廃盤がない
- 受注・製造・発送はAmazonがやってくれるので手間がない
- 1枚目から利益が出る
- Amazonなのでユーザーは便利
などでしょう。
DODを使う場合、CD-Rである以上ライブ物販だけプレスするという選択肢はなかなかないのかな?と思います。
ですからライブ物販はCD-Rをコピーし、ジャケットはDIYでつくることになります。
(DIYだと逆にジャケットにこだわることができますね)
このパターン①のメリットはとにかく、ローリスク、ローコストだということです。
DODの維持費は年間5000円で、CD-RをコピーしてジャケットをDIYすることも売れる度に製造すれば在庫を抱えることもありません。
まぁ、ジャケットの手作りって結構大変ですがプレスCDをつくるのも労力かかりますからね。
(ぼくは作るの好きなんですけど(笑))
デメリットはやはり、CDのモノとしての価値を高められないこととローリターンということです。
物販用のDIYジャケットはともかく、DODはこだわれるポイントはほとんどありません。
また1枚当たりの利益は目減りします。
パターン②通販は自社ネットショップ、ライブ物販はプレスCD
DODを使わなくてもBASE などのネットショップ構築サービスを使うとCDを通販で売ることもできます。
BASE を使うことのメリットは
- 売れた場合の利益が大きい
- 自分で発送するのでオマケを付けたり、サインつけたりできる
- メルマガ機能がある
といった点です。
BASEは初期費用も月額費用もないので、だいたい売れた価格の90%はアーティストが手元に残すことができます。
メルマガもあるので買ってくれた方に継続的に情報をお送りすることができるのも魅力です。
メリットはこのパターン②だと、こだわったCDづくりやサービスができますね。
デメリットとしては手間の多さと購買力の低さ、CDプレスの手間とコストです。
BASEだと注文⇒梱包⇒発送を自分でやらなければいけません。
(それらを委託するサービスもありますが、けっこう高い)
逆に売れすぎると対応できないという矛盾(笑)
そしてなんだかんだ自社ネットショップでモノを売るのは結構大変です。
既にアカウントが登録されていてワンクリックで買え、さらにレコメンド機能も充実しているAmazonと比べると…。
自分が買う側になって想像するとやっぱりAmazonの方が買う気になりますよね。
もちろんCDプレスはCD-Rコピーよりもお金はかかります。
こればっかりはしょーがないですね。
③通販:全国流通+ライブ物販:CDプレス
パターン③は一般的に想像しやすいパターンですね。
CDはちゃんとプレスして、Amazonはもちろん全国のCDショップで買えるようにする。
ぼくの経験ですとディストリビューターを通して全国流通するとレーベル(アーティスト)側の取り分は販売価格の50%でした。
パターン②に比べると1枚当たりの利益は減りますが、流通に関する手間は全部丸投げでOK!
ありがたいですねぇ。
メリットはやはり販売網を網羅していること。
また各種メディアにも取り上げてもらいやすくなります。
デメリットとしては実績がないとCDショップでは(なかなか)売れないことです。
タワレコなどのCDショップに露出できるのは魅力なんですが、試聴機入れてもらったり、平台に展開してもらうにはそれなりの実績と現場との関係性が必要です。
やっぱり棚の隅っこにポンと置いてあるだけだと売れないんですよねぇ…。
これは直接的なデメリットではないのですが、一番大きな「CDショップで売れる」というメリットを活かすのはかなり難しいということです。
またパターン②と同じくCDプレスのコストですね。
全国流通というと気合はいちゃって多めに刷りがちなんですよねぇ(笑)
どれを選べばよいか?
もちろんこの3パターン以外にも色々と方法はあるんですよ。
(Amaoznのe託とか、そもそも配信だけするとか)
まぁ、挙げだすとキリがないですし、わかりやすくするために3パターンにしておきます。
さて、そんな多様な選択肢の中でミュージシャンはどれを選ぶべきなんでしょうか?
ぼくは以下の基準で考えるようにしています。
それはアートか?
今、音源の流通方法はたくさんあります。
CDやレコード、配信でもストリーミングや動画、ハイレゾもあります。
その中でもとりわけCDは多様性があり、芸術性の高い媒体だと思います。
「CDがアートだなんて言いすぎ!」?
ぼくも(ヘンな)特典ばかりのCDばかりの時はそんな感じだったんですよ。
でもNovembersの「シェアCD」や、ゴールデンボンバーの「特典なしCD」で認識が変わりました。
CDを含めた総合的なマーケティングはそれ自体がストーリーであり、メッセージであり、アートであると思います。
最近だと、ハイスタンダードの「ゲリラ販売」とか超カッコよくないですか!?
CDを手掛かりとして、コミュニケーションやコミュニティが生まれる。
それってとても素敵な文化だと思います。
(逆に言えばとってもレベルの高い話だと思いますけど)
CDジャケット含め、流通でも「表現」をしたい人はやはりCDプレス、ないしDIYでジャケットをつくるべきです。
ですから、その場合はパターン②かパターン③が有力候補になりますよね。
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それでどのくらい儲けたいか?
CDを売ってどのくらい儲けたいですか?
たくさん売りたいなら必要なのは、リスクを持つことと販売網を広げることが重要になります。
「CDは売れない」なんて言っても、売ってる人は売っている…。
たくさんCDを売りたいのであれば、やはりパターン③ですよね。
それはメンバーの生活を守っているか?
それぞれのリスクやコスト、労力を精査した結果、メンバーはその負担に耐えられますか?(ソロならあなた自身)
CDリリースするというのはCDプレス代だけでなく、レコーディングの費用やそれにとのもなう雑務もこなす必要があります。
例えばアルバイトで年収150万円程度のフリーターが、CDのリリースで20万円も30万円も使うべきではないと個人的には思うのですね。
選択肢が多様になって、誰でも挑戦できる分、必要なのはお金だけだったりします。
だからこそ、生活を守るという意識は大切だと思います。
「アートの名のもとに生活がないがしろになって良いのか!?」
これはぼく自身、現役バンドマンとして日々悩むところです。
星川の場合、こうしたい
で、いろいろ長々書いてきましたのを踏まえると、今のぼくはパターン①が有力候補です。
現在、ぼくはヘイシーズというバンドをやっています。
まず「CDでアートをしたいか?」という問いに対しては「したい」んですよ。
でも、できないんですよ!!
美的センスなさ過ぎて!(笑)
フォトショもイラレも使えません…。
そしてメンバーの中にもデザインスキルをもった人間もいませんし、外注するとなるとこれまたコストがかかっちゃいます。
次に「どのくらい儲けたいか?」というと「ほどほど」です。
年間で2,3万円程度。
枚数にして3,40枚くらいでしょうか?
プレスの最低ロットはだいたい200(300?)ぐらいですよね。
やっぱり規模に合わない。
最後に「メンバーの生活を守っているか?」という問いに対してはプライバシーがあるので言えません(笑)
が、ぼく自身はバンドに対してあまりに大きな経済的負担は耐えられない状態です。
まだDODは発送などの付帯業務がないのも魅力でした。
時間的余裕につながるので。
以上を踏まえると、ヘイシーズがCDを販売するときは
パターン①通販はAmaoznのDOD、ライブ物販はCD-RのDIYジャケット
になりそうです。
まぁ、まだリリースの予定は立ってないので変わる可能性も高いのですが(笑)
(DODはまだ明らかになっていない部分もありますし)
自分のアタマで考えよう!
ミュージシャンやバンドマンは「プロとアマチュアの差がなくなった」なんて言われて久しいですが、このように今はCD1つとっても色んな方法がありますよね。
この自由な時代では「売れる・売れない」はもとより、音楽活動がその人にとって「幸せ」につながることが一番だと思います。
そして「幸せ」とは他人が定義できません。
ですから、ぼくが伝えられるのは選択肢を伝えることと、自分の例を参考にしてもうことしかありません。
結論が『自分のアタマで考えよう!』では身も蓋もなく、すわさんの質問には答えられてないかもしれません(苦笑)
せっかく質問いただいたのにすいません。
読んでくれた読者のみなさんには、なにか良いきっかけになったら幸いです。