バンド小説おすすめ17選|バンドマンの自伝的小説から高校生の青春小説、音楽業界の物語まで

「バンドをテーマにした小説が読みたい!」
「高校生バンドの青春ものや、売れないバンドマンのリアルを描いた作品を探している──。」
そんな方に向けてこの記事では、バンド小説の名作17冊を、
- バンドマンが書いたリアルが光る作品
- 高校生バンドマンの青春が弾ける物語
- 音楽業界を深堀りした小説
- おやじバンドの再挑戦がテーマの作品
- その他、ファン心理など多様な視点の小説
といった切り口で紹介します!
まずは全17作品を「一覧表」で俯瞰し、そのあと各ジャンルごとに読みどころを深掘りしていきます。
「最近、音楽から離れていたかも」「またバンドやりたいな」という方も、ぜひ気になる作品から読んでみてください!
バンドマン小説17作品 一覧表
各作品を一目で比較できるよう、一覧表にまとめました。
まずは気になる一冊を探してみてください。
| タイトル | 著者 | ジャンル | 一言内容紹介(短め) | 読後感タグ |
|---|---|---|---|---|
| 祐介 | 尾崎世界観 | バンドマンが書いた | 売れないバンドマンの孤独と破滅衝動を赤裸々に描く、生々しい成長物語。 | 重め/生々しい |
| グミ・チョコレート・パイン | 大槻ケンヂ | バンドマンが書いた | 冴えない高校生がバンドを始め、悩みながら青春を駆け抜ける爽やかな物語。 | 爽やか/青春 |
| ぐるぐるまわるすべり台 | 中村航 | バンドマンが書いた | 顔も知らないまま結成したバンドの成長と“バンドあるある”が楽しい一冊。 | 軽やか/ユーモア |
| 新しい時代への歌 | サラ・ピンスカー | バンドマンが書いた | 仮想ライブ主流の未来で“生の音楽”を求める人々を描くSF×ロック小説。 | 重厚/未来的 |
| ぎぶそん | 伊藤たかみ | 高校生バンド青春 | 文化祭ライブを目指す10代の友情と恋の甘酸っぱさが詰まった青春物語。 | 甘酸っぱい/青春 |
| 階段途中のビッグ・ノイズ | 越谷オサム | 高校生バンド青春 | 高校生たちがバンドに本気で向き合い、壁を越えていく爽快な物語。 | 爽快/熱い |
| ロック・オブ・モーゼス | 花村萬月 | 高校生バンド青春 | 才能を見いだされた少女が、音楽の光と闇に飲まれながら成長する濃密な物語。 | 濃密/エグい |
| レイジ | 誉田哲也 | 音楽業界 | 対照的な2人のミュージシャンが、業界の現実と葛藤の中で生きる濃厚ドラマ。 | 濃厚/葛藤 |
| 音楽が鳴りやんだら | 高橋弘希 | 音楽業界 | メジャー成功とプレッシャーの中で崩れていくバンドの光と影を描く。 | 重厚/狂気 |
| ネクスト・ギグ | 鵜林伸也 | 音楽業界 | ライブ中の刺殺事件を軸に、音楽とは何かを問うロック×ミステリー。 | ミステリー/疾走感 |
| ギター・ブギー・シャッフル | イ・ジン | 音楽業界 | 1960年代ソウルで孤児の少年がギタリストとして成長する重厚な物語。 | 歴史/成長 |
| オヤジ・エイジ・ロックンロール | 熊谷達也 | おやじバンド | 中年男性が再びギターを手にし、趣味が人生を変えていく温かい物語。 | 温かい/前向き |
| 1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター | 五十嵐貴久 | おやじバンド | 主婦が仲間とバンドを組み、舞台へ立つまでの成長と家族の変化を描く。 | 優しい/爽やか |
| フィッシュストーリー | 伊坂幸太郎 | その他 | 無名バンドの一曲が時代を超えて人々の人生を動かす、希望ある群像劇。 | エモい/希望 |
| ポニーテールはふりむかない | 喜多島隆 | その他 | 義理人情で集まる仲間たちとの“昭和の熱さ”が光る、不良少女バンド物語。 | 昭和/熱い |
| バンギャル ア ゴーゴー | 雨宮処凛 | その他 | V系バンドにハマった少女の、過激で赤裸々な“追っかけ”成長ストーリー。 | 過激/赤裸裸 |
| ハイドラ | 金原ひとみ | その他 | 静かな絶望と、ライブ描写の熱が対比する耽美なバンドマンとの恋の物語。 | 静か/耽美 |
続くセクションでは、それぞれの小説を“どこがおもしろいのか”深掘りして紹介していきます。
バンドマンが書いた音楽小説
バンド経験のある著者が、自身のリアルな体験や視点をもとに描いた音楽小説をまとめました。
ライブハウスの空気、スタジオ練習の息づかい、人間関係のしんどさ──“やった人にしか書けない”バンドマン目線の作品ばかりです。
祐介(尾崎世界観)
『祐介』は、売れないバンドマン・祐介が、希望の見えない日常にもがきながら生きる姿を描いた尾崎世界観さんの初小説です。
祐介はスーパーでアルバイトをしながら音楽活動を続けますが、バンド仲間には見放され、恋をした相手はピンサロ嬢という不安定な関係。
人間の卑しい部分が生々しく描写されています。
物語はどこかに明確に向かって進むタイプではありませんが、過剰な比喩表現、バンドマンならではの視点、売れない時代のエピソードが絡み合い、
独特の勢いと世界観を生み出しています。
また、貧乏ゆえのエピソード(弦を煮て再利用する、レンタルビデオの中身を抜く方法など)も強烈で、
負のエネルギーが祐介を動かしていることが印象的です。
終盤では、衝撃の展開で読者を驚かせます。
希望を失った青年が抱える惨めさや焦り、破滅衝動、そしてそれでも音楽にしがみつく…。
読み心地としては決して明るくありませんが、「売れない時代のバンドマンのしんどさ」を真正面から描いた一冊です。
グミ・チョコレート・パイン(大槻ケンヂ)
冴えない高校生活を送っていた大橋賢三は、オレたちにも何かができるはずと親友たちとバンドを結成し、ライブに向けて練習が始まります。
何を隠そうロックミュージシャン大槻ケンヂさんの自伝的青春大河小説です。
自分に自信が持てない人、コンプレックスがある人は、主人公たちが悶々と悩む様子や葛藤を持つ姿に共感しつつ、読み終わった後にはスッと爽やかな気持ちになる小説です。
青春真っ只中の中高校生はもちろん、もう青春が終わってしまった大人たちにもぜひ読んでもらいたい作品。
ぐるぐるまわるすべり台(中村航)
中村航さんの小説で、ビートルズの「ヘルタースケルター」をモチーフにした小説です。
塾の講師をしている主人公がネットで生徒の名前を使いバンドメンバー募集のページに掲載したコメントを見て、お互いの顔を見ないまま結成されたバンドにまつわる話。
著者の中村航さんもバンドをやっていたらしく、バンドを組んでスタジオに入ったり練習をしたことのある人なら思わず「あるある」とうなずいてしまうようなエピソードが沢山あります。
それぞれの担当の楽器について話すバンドマンたちの言葉がとてもユーモアがあり、キャラにあっていて楽しい小説です。
新しい時代への歌(サラ・ピンスカー)
感染症と度重なるテロによって「人が集まること」が禁じられた未来社会が舞台です。
ローズマリーは巨大企業スーパーウォリーで働いていましたが、ある顧客から仮想空間ライブのチケットを受け取ったことで音楽の魅力に目覚め、密かに行われるリアルなライブから才能あるアーティストを探すスカウト職へ転身します。
一方、もうひとりの主人公ルースは、ライブが当たり前だった“前の時代”に活動を始めたシンガーソングライターで、オンライン全盛の世界でも「生の音楽」の熱を忘れられずにいます。
仮想空間でのコミュニケーションが常識となった社会で育ったローズマリーと、昔のライブ文化を知るルース。
価値観の異なる2人が出会い、惹かれ合い、新しい時代でも音楽を通して自分らしく生きる道を模索する物語です。
本作は、ミュージシャンでもある著者サラ・ピンスカー氏のデビュー長編で、2020年度ネビュラ賞長篇部門を受賞しました。
2019年刊行にもかかわらず、翌年に世界的なパンデミックが起きたため、「予言の書」としても注目されました。
淡々とした筆致ながら、オンラインでは代替できない“生の音楽の力”や、大企業の支配に抗う創造のエネルギーが描かれています。
ただし全602ページと読み応えのある作品です。
物語の核には、「古い価値観に縛られなくていい。自分だけの音楽、自分だけの生き方を創り出していい」という力強いメッセージが込められています。
高校生バンドマンが主人公の青春小説
文化祭、初ライブ、仲間との衝突や恋…10代ならではの「不器用でまっすぐな熱さ」を描く青春バンド小説を紹介します。
バンドを始めたばかりのあの頃の気持ちを思い出させてくれる、甘酸っぱくてエネルギッシュな物語が揃っています。
ぎぶそん(伊藤たかみ)
主人公少年ガクが仲間を集めてバンドを始め、学園祭でライブをするという話。
親友マロと幼なじみのリリイ、それに、問題児のたける。
この4人はケンカや練習を経て、徐々に仲間になっていく。
見どころは何といっても文化祭のライブ!
ぶつかり合いながら成長をし、そして、一体となったあの文化祭ライブは感動のシーンです。
そして、この小説の魅力は何といってもガクとリリイの恋!
どうなるんだとハラハラしたり、がんばれ!と応援したくなったり。
すごくきゅんきゅん甘酸っぱい! (笑)
主人公と同年代におすすめしたい青春バンド小説です。
階段途中のビッグ・ノイズ(越谷 オサム)
高校生の主人公がバンドを結成し学園祭で発表すると言う青春ストーリー。
高校時代に自分が本気で向き合ったものを思い出させてくれる、爽快な物語です。
青春モノですが大人にもおすすめできる作品です。
例えば自分も過去に、部活に打ち込み勉強そっちのけで青春を謳歌していた人なんかは、懐かしさと甘酸っぱさに共感して、ついつい登場人物たちを応援したくなる。
何かを行うには壁がありその壁をどうやって超えていくのか、超えた先には何があるのか、一度読み始めたら一気に読んでしまう作品です。
ロック・オブ・モーゼス(花村萬月)
『モーゼス』は、京都の高校に通う高校二年生・朝倉桜が、天才ギタリスト“モーゼ”に才能を見出され、音楽の世界へ飛び込んでいく青春音楽小説です。
学校で居場所を見つけられず、目立たないように生きてきた桜。
しかし、プロとして活躍する同級生モーゼに強く勧められ、ギターを始めます。
練習の中で音楽に魅了された桜は、高校を中退してモーゼ率いるバンド「モーゼス」に加入し、本気でプロを目指す決意を固めます。
桜は、複雑なコード進行や変拍子、ジャズの名ソロのコピーなど、過酷なトレーニングを重ねて成長していきます。
一方で、バンド加入後は恋心・嫉妬・依存・人間関係など、音楽以外の痛みや混乱にも飲み込まれていき、青春小説としてはかなり生々しくエグい場面も描かれます。
作品には60〜70年代中心のロック・ブルース・ジャズが多く登場し、渋い選曲が物語を彩っています。
全体として、才能に出会った瞬間の衝撃、音楽が人を変えていく力、そして青春の痛みと成長を濃密に描いた一冊です。
音楽業界を描いたバンドマン小説
メジャーデビュー、レーベルとの駆け引き、ライブハウスの裏側…。
ここでは、音楽業界のリアルな仕組みや、バンドマンがビジネスの中でもがく姿を描いた小説をまとめました。
「音楽で食べていくこと」の現実に触れてみたい人におすすめです。
レイジ(誉田哲也)
主人公は、春日航(ワタル)と三田村礼二(レイジ)の2人。
中学の文化祭で一度だけバンドを組んだ2人でしたが、音楽性の違いからレイジが離脱します。
その後、高校・大学と進む中で、お互いを強烈に意識しながらも、自分自身の世界を持ち始めます。
ワタルは有名なインディーズ・バンドのベーシストとして注目を浴びるが、内紛により解散し、以降、音作りに関わりながらも演奏家としては終わってしまいます。
レイジは、学生のコピーバンドよりも、自作自演の世界に没入していきますが、理想のバンドを組むことができずにいた、しかしやっと理想のバンド仲間は、なんと中学時代の同級生!
メジャーデビューも夢ではなくなった。
でも音楽の世界にはそれだけに純粋慣れない大人の世界もたくさんあって…。
そういう世間の中にあって、ワタルとレイジという両極端な2人が、どのような人生を歩むのかが大きな読みどころになっています。
2人の音楽性、音楽に対する姿勢については、本書内でもテーマとして描かれてますが、得に興味深いのは、松下という女性の登場人物です。
彼女はふたりの同級生でもあり、レイジが抜けた後のボーカルでもあったが、音楽活動はその1回限りとし、その後は応援にまわる。
音楽性ではレイジを信奉しつつ、私生活ではワタルと関係を持つ、彼女をめぐる三角関係なんかも取り入れられています。
まさにバンドマンと音楽業界のリアリティ小説といった内容になっています。
音楽が鳴りやんだら(高橋弘希)
『音楽が鳴りやんだら』は、作詞・作曲の天才・福田葵が率いるバンド「サーズデイ」が、
メジャーデビューをきっかけに成功と苦悩の狭間でもがく姿を描いた本格ロック小説です。
葵は幼馴染と組んだバンドで活動していましたが、デビュー条件として“ベーシストを入れ替える”という厳しい要求を突きつけられます。
プロデューサーの「才能を自ら潰すな」という言葉を受け、葵は決断を下します。
バンドはデビュー後すぐに人気急上昇し、チャート上位やアリーナ公演へと駆け上がります。
しかしその裏で、葵は
- レコード会社の商業的方針との衝突
- メンバー交代問題
- 自分自身の理想の音楽とのギャップ
などに苦しみ、ロックスター特有の孤独と狂気を深めていきます。
物語が進むほど、葵の創作への執念と自己破壊的な衝動が強まり、90年代に早逝したロックアイコンたちを思わせる危うさが漂います。
著者の高橋氏自身がバンド経験者であるため、ライブ描写や音楽制作の葛藤がリアルで、ページから音が聴こえるような臨場感があります。
成功が人生を豊かにする一方で、音楽が人を追い詰める側面も描き、ヘビーで濃厚なロック小説として読みごたえのある一冊です。
ネクスト・ギグ(鵜林伸也)
『ネクスト・ギグ』は、ライブ中にボーカルが観客の目前で胸を刺され死亡する不可解な事件から始まる、ロック×本格ミステリー小説です。事件後、人気バンド〈赤い青〉は活動休止に追い込まれます。
主人公はライブハウススタッフの梨佳。彼女は事件直前、カリスマギタリストが“彼らしくない凡ミス”をしたことに違和感を覚え、あの日何が起きたのかを独自に探り始めます。
物語は梨佳がバンド関係者や業界人に“ロックとは何か”を問いかけながら進みます。
ロック=音楽そのもの、金、文化、打ち上げ花火…と人によって答えが異なり、その多様な答えが謎解きのピースとして機能していきます。後半は急加速し、一気読み必至です。
ライブハウス運営の現実、CD不況、アイドルブームなど、現代の音楽業界の裏側も丁寧に描かれており、ロック好きにはたまらない内容になっています。
著者はバンド経験がないものの、ミッシェル・ガン・エレファントやルースターズなどから影響を受けており、
物語全体に“ロックが聴こえる”熱量があります。
ミステリーとしての面白さと、ロック文化への愛が融合した一冊です。
ギター・ブギー・シャッフル(イ・ジン)
『ギター・ブギー・シャッフル』は、1960年代初頭、朝鮮戦争の傷跡が残るソウルを舞台にした物語。
主人公のキム・ヒョンは戦争で家族を失い、孤児として厳しい生活を送っていますが、米軍ラジオから流れる最新ポップスだけが心の支えでした。
ある偶然が重なり、ヒョンは憧れていた龍山米軍基地のクラブでギタリストとして演奏するチャンスを得ます。
そこから彼は、音楽の世界で成長しながら、挫折・バンドの解散・苦い初恋など、さまざまな経験を通してたくましくなっていきます。
作品では、1960年代の韓国音楽シーン――ロックやジャズが米軍基地を中心に広まり、後のK-POPにつながる文化的土壌――が鮮やかに描かれています。
登場人物の多くは当時の実在の人気芸能人をモデルにしており、現在のK-POP前夜の業界の空気が想像されます。
おやじバンドを描いた小説
学生時代にギターを弾いていた大人が、もう一度バンドを始める――。
ここでは、仕事や家族との折り合いをつけながら、「オヤジバンド」として再びステージに立つ人たちの物語を集めました。
「今からバンドを始めても遅くないかな?」と迷っている大人に刺さる作品ばかりです。
オヤジ・エイジ・ロックンロール(熊谷達也)
『オヤジ・エイジ・ロックンロール』は、中年サラリーマンの巧也が50歳手前で再びギターに魅了され、バンド活動を通して人生を取り戻していく物語です。
30年ぶりに訪れた楽器店で、学生時代を思い出し、65万円のギブソンを衝動買いしてしまった巧也。
最初はひとりで昔のロックを弾くだけのつもりでしたが、会社の同僚に趣味がバレたことでバンド結成へと発展します。
やがて学生時代の仲間が加わったり、20代の女性ボーカルと不思議な関係性が生まれたりしながら、アマチュアバンドコンテストの全国大会を目指す本格的な挑戦へと進んでいきます。
物語では、バンド活動を通じて家族や友人との関係も良くなり、“もういい年だから”という思い込みを打ち破って、趣味が人生を豊かにする様子が描かれています。
楽器店で次々と高価な機材を買ってしまう“オヤジ心”の描写や、著者自身がバンド経験者であることによるリアルな音楽描写も魅力です。
400ページとボリュームはありますが、とても読みやすい作品。
全体として、「仕事以外に心から楽しめるものを持つことが、人生を豊かにする」という力強いメッセージが込められています。
1995年のスモーク・オン・ザ・ウォーター(五十嵐 貴久 )
エレキギターを始めたばかり主婦がメンバーを集めていって、ひとつの曲をたくさんの人の前で演奏するまでのプロセスが描かれています。
もちろん本のタイトルになっているスモークオンザウォーターを練習していく過程が主に描かれていますが、メンバーの楽器・音楽に携わる背景も面白く描かれていて、音楽好きな方以外でも読んでいて楽しめます。
ラストの主人公の主婦が引きこもり息子に向けての叫びは圧巻!
文体も分かりやすく読みやすいです。
その他のバンドマンがテーマの小説
バンドマンとファンの関係を描いた作品や、時代・国をまたいで音楽の力を描いた物語など、
上のカテゴリに収まらない“バンドマン小説”をまとめました。
ロックが人の人生をどう動かすのか、さまざまな角度から楽しめます。
フィッシュストーリー(伊坂幸太郎)
現在から過去、さまざまな時代を交差しながら進んでいくストーリーです。
昔あるバンドが作ったフィッシュストーリーという曲が、その後色んなとらわれ方をしながら人々に影響を与えていきます。
その曲に隠された意図は何なのか、その曲に出会ったことによってどう人生が動いていくのかが、読んでいてとても面白いです。
その曲は人に勇気を与えたり、励ましたりします。
しかし過去にその曲を歌っていた本人たちは、こんな曲が誰かに届くのか、何か伝わるのかと葛藤する。
今はわからなくても、自分が発したメッセージはいつか誰かの人生を変えることもある!
そんなメッセージが伝わってくる小説です。
伊坂幸太郎さん原作のこの小説はのちに音楽プロデュースを斉藤和義さんが担当する形で映画化されました。
ポニーテールはふりむかない(喜多島隆)
その昔テレビドラマにもなった、喜多島隆さんの小説です。
ストーリーは不良娘が悪人退治をしながらバンドメンバーを集めていき、今ではなかなかない義理人情に厚いメンバーが集まっていくという「THE昭和」な感じ(笑)
みんなそれぞれ色んな事情を抱え、大切な人を失いながら強くなっていきます。
主人公ミッキーが女性なので女性の方は感情移入しやすいかと思います。
「目的があると人は強くなれるんだなぁ」と読み終えた後の爽やかな読後感があって今時のオシャレな作風ではありまえんが、根強いファンがいる良作です。
バンギャル ア ゴーゴー(雨宮処凛)
この小説は、ヴィジュアル系バンドに魂を奪われた少女達、通称バンギャルが、追っかけの世界に足を踏み入れたことの成長物語です。
著者自身がヴィジュアル系バンドの追っかけで、半自伝的なものとのこと。
実在のバンドをモデルにしたであろうバンドもたくさん登場して、なかなか興味深いです。
でも事実だったとしたら、めちゃくちゃ赤裸裸で、この世界を知らない人にとってはかなりの衝撃!
この小説で描かれるおっかけは、会場から出る車をタクシーで追跡して、宿泊ホテルを特定し、チェックアウト後の部屋に侵入してニヤニヤするという…。
かなりスレスレなクダリもあります(笑)
主人公は何度も自問しています、なぜステージに立っているのは自分じゃないのか。
何かに打ち込んで、何かで名を立てて、自分の道を見つけて輝いている人を羨むその気持ち、好きな人が輝いていれば輝いているほど、自分がカスみたいに思えてくる。
そんな心理描写も魅力。
今に続く「推し活」の原点として読んでも興味深い作品です。
ハイドラ(金原ひとみ)
「蛇にピアス」で有名な金原ひとみさんの作品です。
珍しいのが、バンドマンに片思いではなく、バンドマンに好かれる小説です。
主人公はモデルで、恋人が写真家で、表面上静かに生活をしてきましたが、
そこに変化をもたらすのがバンドマン。
全体的に絶望的で静かな小説ですが、バンド演奏の場面の文章の熱気に飲み込まれます。
ファンなら誰もが一度はあこがれる「ステージから視線をもらう」シーンが、とても文学的に印象に残る描写で描かれています。
まとめ|音楽の”熱”を小説で呼び起こそう
バンドをテーマにした小説は、青春のきらめきも、大人の苦さも、音楽に人生を賭けた人の熱も、そのすべてを物語として受け止めてくれます。
今回紹介し作品には、
- バンドマンだからこそ描けるリアル
- 高校生バンドマンのまっすぐな情熱
- 音楽業界の光と影
- 大人になってから再び音楽に向き合う姿
- ファン心理や“推し活”に近い視点
など、多様な「音楽の物語」が揃っています。
どの作品にも共通しているのは、“音楽が人の生活を変え、支え、前に進ませる力を持っている” ということ。
読み終えたあと、
「またバンドをやりたい」「ギターを弾こうかな」
そんな衝動がふっと胸に戻ってくるはずです。
ぜひ、いまの自分に響く一冊を見つけてみてください。
関連|バンドマンの映画、アニメも
小説以外にも「バンドマン」「音楽」がテーマになった作品をまとめています。
合わせてチェックしてみて下さい。
























